外国人に対する労働関係法令の取扱い
日本国内で就労する限り、国籍を問わずに労働関係法令の適用があります。
具体的に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等については、外国人についても日本人と同様に適用されます。(ワーキングホリデー滞在の場合、雇用保険は適用除外となる)
外国人であることを理由に低賃金にするなどの差別は許されません。
アジア新興国やTPPを含めた昨今の社会、経済事情から外国人労働者を安価な労働力として利用する時代ではもはやなく、社会、経済、文化交流のための大切なキーマンとして適切に接することが、きっと会社の安定的かつ継続的な発展をもたらす気がいたします。
とはいえ、強制加入保険について二の足を踏んでしまう会社側の事情も納得できる場合があります。そんなときは、様々な観点から労務制度を見直し、助成金などを活用しながら無理のない形での移行を検討されてみてはいかがでしょうか。
参考「会社設立・起業支援・成長戦略トータルケア」
外国人労働者の労働条件、雇用管理について留意すべきところ
雇用対策法により、外国人の雇用管理の改善、離職時の再就職援助が事業主の「努力義務」とされています。
その際に必要な指針が「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(外国人指針)」です。詳しくはリンクを確認してください。ただし、文字が多く確認も大変だと思いますので、以下に要点を記します。
●基本的な考え方
事業主は外国人労働者について、
1、労働関係法令および社会保険関係法令を遵守する。
2、外国人労働者が適切な労働条件および安全衛生の下、在留資格(ビザ)の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講じる。
●外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずるべき措置
1、外国人労働者の募集および採用の適正化
2、適正な労働条件の確保
3、安全衛生の確保
4、雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険の適用
5、適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等
6、解雇の予防および再就職援助
●外国人労働者の雇用労務責任者の選任
事業主は、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、この指針に定める雇用管理の改善等に関する事項等を管理させるため、人事課長等を雇用労務責任者として選任する必要があります。
外国人を雇用した場合の届出
雇用対策法により、外国人労働者を「雇用したとき」と「離職したとき」に、その都度、当該外国人の「氏名」、「在留資格(ビザ)」、「在留期限」等について確認し、ハローワークへ届出ることが義務付けられています。
なお、氏名、在留資格(ビザ)、在留期限などは在留カードや外国人登録証明書に記載されているとおりに、届出書に記載する必要があります。ただし、在留カードや外国人登録証明書を提示したり、写しを提出する必要はありません。
提出を怠ったり、虚偽の提出をした場合は、30万円以下の罰金が課せられます。なお、不法就労者を雇い入れた場合、事業主には刑事罰が科されます。そのためにも、当該外国人の在留資格(ビザ)の確認や、資格外活動許可、就労資格証明書等の確認は怠らないようにしましょう。
なお、その在留資格(ビザ)の確認について、雇用主が、通常一般人の注意力を持って、その方が外国人であると判断できる場合に行なうべき義務を課すものであり、氏名や言語などから、その方が外国人であることが一般的に明らかでないケースであれば、確認や届出をしなかったことで、法違反を問われることはありません。
よって通常外国人であると判断できる場合に、在留資格(ビザ)等を確認しなかった場合、指導、勧告および罰金の対象になります。
最後に、この届出はインターネットの電子申請により行うことができます。詳しくは「外国人雇用状況届出システム」をご覧ください。
また、外国人従業員等の入退社があったときは、その時から14日以内に入管へ届出る義務がありますが、ハローワークへの届出を先に行なえば、入管への届出は不要です。なぜなら、ハローワークから入管へ報告がいくからです。
外国人の社会保険、特に年金保険の脱退一時金制度について
健康保険等の社会保険の適用については、先にも述べましたとおり、外国人労働者も日本人と同様に適用対象となります。(ワーキングホリデー滞在の場合、雇用保険は適用除外となる)
よって、健康保険、厚生年金保険の適用事業所で外国人を雇用する場合は、これらの制度の加入者となり、日本人と同様に給料に応じた保険料を納入するなどの手続きが必要となります。(ただし、当該外国人が日本以外の国で現に社会保険料を負担しているときは、保険料の二重払いを避けるため、社会保障協定を結んでいる相手国であるときに限り、日本での保険料の支払が免除されます)
外国人の中には年金保険は掛け捨てになると誤解したりする方もいます。しかし、任意加入の保険ではなく、法定保険でありますから、対象となる場合には加入しなければなりません。
それでは、上に述べました「年金保険は掛け捨てになると誤解」についてですが、この「誤解」と表現するには理由があります。それは外国人の年金保険「脱退一時金制度」によるためです。つまり払った年金額の払い戻しを受けることができます。
気をつけるべきことは請求可能期間であり、国民年金、厚生年金保険、共済組合の被保険者資格を喪失した後、日本を出国後2年以内に請求する必要があります。
ビザ(VISA)のしゅるい
短期ビザ(Short term stay VISA)
観光ビザと呼ばれるものです。日本に90日以内の滞在で、日本の会社で仕事をしない場合はこのビザを申請します。目的に企業視察や講習、会合も含まれます。通常の海外出張もこれです。
就労ビザ(Working VISA)
就労ビザとは日本で働くことを目的として取得することができるビザの総称です。
学生ビザ(Student VISA)
日本の学校に留学し、勉強するためのビザです。日本でアルバイトをするためには、別に資格外活動許可をとらなければなりません。
文化活動ビザ(Cultural Activities VISA)
日本で日本の文化について研究したり、また学問やアート活動をするためのビザです。ただし、それにもとづく収入があってはいけません。
研修ビザ(Trainee VISA)
日本の機関の中で、研修生として研修をするときに必要となるビザです。
特定活動ビザ(Designated Activities VISA)
外国の父や母と一緒に日本で生活したり、メイドさんを日本に連れてきたり、国際文化交流やインターンシップ、ワーキングホリデーなど、特別な理由で日本に滞在するためのビザです。
家族ビザ(Dependent VISA)
日本に滞在している外国人が、夫や妻、子供の世話をするため、一緒に日本で生活をするときに必要となるビザです。
結婚(Spouse)・子供(Child)ビザ(VISA)
日本人と結婚した外国人やその子供(孫まで)、日本に永住している外国人と結婚した外国人やその子供が日本に在留するために必要となるビザです。
つける仕事に制限はありません。
永住ビザ(Permanent Residence VISA)
日本に長く滞在し、生活のほとんどが日本にある善良な外国人がもらえるビザです。
つける仕事に制限はありません。
定住ビザ(Long term Residence VISA)
法務大臣が外国人について特別な理由から日本に住むことを認めるビザで、人道上、その他特別な理由が必要です。